DNOW活動報告

2009年2月活動についての参加者のレポートをご紹介します。

JAVDO

医員 (レジデント) S.N.

今回JAVDO の活動に参加し発展途上国における口腔内の現状やそれに基づく国際交流の在り方及び日本という国の位置づけを改めて考える貴重な経験になった。訪れた F.F.S.C.? (ASSOCIATION "FRIENDS FOR STREET CHILDREN"IN HCM-CITY)の施設の一つである「ビンチュウ能力開発センター」において,約250名の子供達を検診し,その検診結果に基づいて約200 名の治療を行った。

子供達の口腔内環境については,以前,(1)ベトナムの6~8 歳の80~93.7%で何らかの歯の病気を抱えている,(2)歯磨きをしていないかまたはしていても適切な磨き方をしていない,(3)虫歯になった乳歯を放置している,(4)早期に診察や治療をうけていない (VIET.JO(ベトジョー・ベトナムニュース)2008年12月16 日配信号)という記事を読み,衝撃を受けていたが,今回の検診結果はやはりその記事と合致していた。こういう状況に陥っているのは,訪れた施設の前に駄菓子屋さんがあるように,砂糖は国の成長とともに比較的摂りやすくなっている反面,公衆衛生といった分野が発展していないという成長の歪みに一因があるように思う。

検診結果を受けて,子供達の抜歯を行った。その中で,氷久歯を抜歯する機会もあった。10 歳前後で永久歯の抜歯をしないといけなくなっている状況をみながら,子供達の口腔内は将来どのようになっているのだろうかという不安が頭をよぎった。そのような状況を打開すべく,子供達の口腔内環境の改善を目的に歯ブラシの重要性や砂糖の摂取制限に関するべトナム語のポスターを同行した信田さんと作成した。ポスターは,歯ブラシの細かいテクニックではなく,まずは歯ブラシを手に持ってやってみよう!ということに重点をおいた。歯科衛生士の渡辺さんがこのポスターを使って子供達に説明したのだが,少しでも子供達の口腔内が改善することを期待している。以上から,ベトナム国内の第一次予防に対する絶対的なマンパワーの不足とともに第一次予防が徹底できれば,口腔内の改善がかなり見込めるのではないかと考察した。

話はガラッと変わるが,街を歩いて感じたのは,ベトナムにおける日本の信用度の高さである。

ベトナム人の多くが利用するバイクは日本のメーカー製が殆どである。また,デパートの正面玄関に日本製のバイクと白物家電が飾られていたことは印象深かった。ベトナムにおけるこのような日本の姿が日本で報じられることは殆どないが,日本国内で報じられることで,日本・ベトナム間における友好の輪は強固になるだろうし 私も微力ながら少しでも多くの人に伝えていきたいと思っている。

前のページに戻る

ベトナムにおける歯科治療ボランティアの体験

補綴科 (咬合・義歯) 医員 (レジデント) M.S.

今回私は岡山大学学長裁量経費の支援によりべトナムにおける歯科治療ボランティアに参加することができた。1年前の募集があった時に参加したいと思っていたので今回の募集を学内のエレベーターで見たときはすぐに飛びついた。

この活動に参加したいと思った動機は,実は「ボランティア」自体に強い関心があったわけではなく、日常の職場では経験できないことを経験してみたいと思っていたことである。見聞を広めるべく,私はこの活動にも応募した。

訪れたべトナムホーチミン市の印象は,いかにも東南アジアといった印象で、高い気温と活気溢れる人々の熱気とが混ざっている。初日は移動から解放され完全に旅行気分になっていた。

今回訪問する、Friends For Street Children (FFSC)は,学校に通えない子供たちに無料授業を開き社会へ出ていけるよう支援する団体である、ということだった。帰る家がなく施設で生活している孤児たちもいるという。説明を受けた後は市場や屋台で子供を見かけると,この子はどのような環境で生活しているのだろうと気になるようになった。

まずは1日かけて施設の子供たち全員に歯科検診を行い、翌日に要治療の子供たちを治療した。FFSCの子供たちは口腔内環境の悪い子ばかりである。乳歯はう蝕だらけ、混合歯列期で永久歯が既に残根状態の子供もたくさんいた。明らかに治療が必要だろう。だが、今回私たちができるのは1人の子供に1回の治療だけである。1 回の治療で完全に対応できる症例は少ない。1人にかけられる時間も少ない。この、日本とはあまりに異なる環境、 条件でどう判断すれば良いか悩む場面ばかりだった。泣きじゃくる子供にはどう対応するか?時間をかけて歯科治療に慣れさせる時間はない。今後長期間歯科治療を受けられないことを考えるとむりやりでも処置するべきか。しかし 歯科治療への恐怖感は今後ますます歯科治療を受ける機会を奪うことになるかもしれない。最後の子供を診た後も,これで良かったのか?別の方法をとるべきだったのでは?と、ずっと考えていた。「疲れた!よく働いた! 」という達成感はあまり感じられなかった。

現在の日本は歯科医師過剰,医療訴訟,等,暗い言葉がよく登場し,なんとなく閉塞感を感じることがある。しかし、ひとたび国外へ目を向ければ私たちの知識と技術はとても有益なもので ダイレクトに人々に貢献できる職業であることを再認識した。このような環境にあることを幸運だと感じた。そして自分がその役割を担うことがで きるのであればもっと何とかしたいと思った。

今回の体験で多くのことを学んだ。普段と違うことを経験して大きな刺激を受けた。しかし1回だけでは単に体験しただけであって,そこから考え、子供たちに役立つ効率的な方法に発展させ実行できなければ、本当に役に立つ仕事をしたとは言えないだろう。今はべトナムの子供たちから学ばせてもらったことばかりだ。今回は初参加でありチームのなかでもゲストのような感覚があったが,もっと主力として働きたいと思った。今後も参加させていただきたいと思っている。

前のページに戻る

このページのトップへ